
「若いからWeb担当者やって」と言われた人へ|9個の仕事のうち、自分で持つべきものはどれか

ある日突然「うちのWeb担当ね」と言われた。
理由は「若いからパソコン詳しいでしょ」。
中小企業のWeb担当者は、こうして生まれることがほとんどです。
筆者もそういう形でWeb担当をやっていた時期があります。
ホームページの更新、ブログ、広告、SNS、他部署からの依頼、パスワードの管理⋯。
数えてみると、やることは9個くらいあります。
そして、本業と掛け持ちで9個を全部やろうとして、毎日追われていました。
この記事では、その9個を全部並べた上で、どれを自分で持ち、どれを手放すかの仕分けまで書きます。
先に立場を明かしておくと、筆者は中小企業のWeb運用を仕事として請けている側です。
つまり「手放してください」と言えば言うほど、自分の仕事が増える立場にいます。
それでも、外に出さないほうがいい仕事があります。
そこも含めて正直に書きます。
目次
仕事が終わらないのは、量が多いからではない

Web担当を任された人が最初にぶつかる壁は、知識不足ではありません。
9個すべてを自分の仕事だと思っていることです。
広告の設定を調べ、バナーを作り、ブログを書き、パスワードを管理し、他部署の依頼を捌く。
本業と掛け持ちでこれを回そうとすると、当然どれも中途半端になります。
そして一番まずいのは、手放していい作業に時間を取られて、自分にしかできない仕事が後回しになることです。
Web担当者の仕事は、9個を全部こなすことではありません。
9個を仕分けて、自分が持つべきものだけを持つことです。
9個の仕事は、3つに分かれる

仕分けの基準はシンプルです。「その仕事を他人がやったとき、機能するかどうか」だけを見ます。
- 手放してはいけない仕事……他人がやると、会社の意思そのものが外に出てしまうもの
- 手放した方がいい仕事……専門性が高く、自分でやると時間あたりの損が大きいもの
- 手放すと損をする仕事……一見外注できそうだが、他人の言葉になった瞬間に効かなくなるもの
3つ目が、あまり語られないところです。
順に見ていきます。
【手放してはいけない】3つの仕事

1. 何のためのサイトかを決める
最初にやることはここです。
「このサイトで何をしてもらいたいか」を一つに絞ってください。
問い合わせを増やしたい、電話をもらいたい、来店してほしい、採用したい。
複数ある場合は順番をつけます。
これを外に出せない理由ははっきりしていて、決めていない状態で外注すると、外注先が代わりに決めてしまうからです。
そして外注先が決める目的は、たいてい「作りやすいもの」「成果として見せやすいもの」になります。
会社が何で食べているかを一番知っているのは、外の業者ではなく中にいる人です。
ここだけは自分(と経営者)で決めてください。
あわせて、トップページの目立つ場所に目的を混ぜないことも意識してください。
問い合わせが目的なのに求人バナーが一番目立っていると、訪れた人は迷います。
2. 目的を数字にする
「アクセスを増やしたい」は目標ではありません。
「月に問い合わせを10件もらう」が目標です。
数字が決まると、逆算ができるようになります。
たとえば今、月に1,000回サイトが見られていて、問い合わせが5件あるとします。
問い合わせした人の割合は0.5%です。これを10件にしたいなら、道は2つしかありません。
- 来る人を増やす(1,000回を2,000回にする)
- 来た人のうち問い合わせする割合を上げる(0.5%を1%にする)
どちらの数字が動いていないのかが分かれば、次にやることは自動的に決まります。
逆に、この分け方をしないまま「アクセスを増やそう」と走ると、来る人が増えても問い合わせが増えない、ということが普通に起きます。
この2つを分けて見る話は、実際の数字を使って別の記事に書いています。
『記事を半分消してアクセスが半減しても申し込みは1件も減らなかった』では、来る人の数を半分にしても申し込みが減らなかったケースを扱っています。数を増やすことと、申し込みが増えることは別だという話です。
目標の数字を決めるのも、外には出せません。
何件あれば会社として成り立つのかを知っているのは、中にいる人だけだからです。
3. アカウントと権限を自社で持つ
ホームページのログイン情報、サーバーとドメインの契約、広告アカウント、SNSアカウント。
これらが今どこにあるのか、誰が持っているのかを把握しておくのはWeb担当者の仕事です。
Web担当になったら、まずどのアカウントが存在するかを棚卸ししてください。
よくあるのが、退職した人のアカウントが残ったまま誰も把握していない状態です。
SNSも、部署ごとに勝手に作られて何年も放置されているものが出てきます。
使っていないものは消し、続けられないSNSは畳んで構いません。
更新が止まったアカウントは、あるだけで会社の印象を悪くします。
そして、ここが一番大事なところです。
作業を外に出すのはいいのですが、権限そのものを渡し切らないでください。
管理権限が自社に無いと、業者を変えたいときに変えられなくなります。
『制作会社のサーバーに入れてもらったら表示が遅くなった話』では問題を3つに分けて書いていますが、そのうちの一つが管理権限が自社に無いことでした。契約そのものが相手の名義だと、自分の判断で動かせません。
作業は外、権限は中。
この線を最初に引いておいてください。
【手放した方がいい】3つの仕事

ここからは逆に、自分で抱えないほうがいいものです。
4. 広告の運用
Google広告やSNS広告が、Web担当者の管轄になることがあります。
正直に書くと、本業と掛け持ちの状態で広告を自分で回すのは、かなり分が悪いです。
設定して終わりの仕事ではなく、毎週数字を見て、効いていないキーワードを止めて、文言を差し替える、という継続作業だからです。
止まっている間も広告費は出ていきます。
放置した1ヶ月ぶんの無駄は、外注費を上回ることがあります。
ただし、丸投げにはしないでください。
外注しても、次の2つは自分で把握しておく必要があります。
- 今月、広告から何件の問い合わせがあったか
- その1件に、いくらかかっているか
この2つを聞いて、すぐに答えが返ってこない相手は避けたほうがいいです。
打ち合わせにも必ず参加してください。
参加しなくなった時点で、広告は「よく分からないけどお金が出ていくもの」に変わります。
5. サーバー管理とセキュリティ
中小企業のホームページも改ざんされます。
10年ほど前、筆者がWeb制作会社で働いていたとき、100件以上のクライアントサイトが一晩でまとめて改ざんされたことがありました。
※当時の記憶によるもので、詳細な記録は手元にありません。件数の桁として受け取ってください。
規模が小さいから狙われない、という話ではありません。
古いまま放置されているサイトが機械的に探されて、まとめてやられます。
最低限やっておくべきことは4つです。
- WordPress本体とプラグインを定期的に更新する
- ログイン画面のURLを初期設定から変える
- パスワードを使い回さない
- 使っていないアカウントを消す
この4つは、やり方さえ分かれば自分でもできます。
ただ、更新して壊れたときに直せるかが問題です。
WordPressの更新は、たまにデザインが崩れたり、フォームが止まったりします。
そこで固まってしまうと、サイトが表示されない時間が生まれます。
戻し方が分からない状態なら、月額の保守で外に持ってもらうほうが安全です。
金額の目安は、あとの章で自分の請求内訳を出します。
6. 手を動かす作業(バナー・コーディング・記事執筆)
バナーを作る、ページの見た目を整える、記事を書く。
この手を動かす部分は、外に出して構いません。
ただし、何を作るかを決めるのは自分です。
ここを一緒に渡すと、出てくるものが目的とズレます。
改善の中身も同じで、やることは2つしかありません。
来る人を増やすことと、来た人に申し込んでもらうことです。
来た人に申し込んでもらうために効くのは、地味な3つです。
- 申し込みフォームの入力項目を減らす
- 申し込みボタンを、ページのどこにいても見える状態にする
- 知りたい情報をページの上のほうに置く
ボタンについては「しつこすぎるかな」と思うくらいでちょうどいいです。
ボタンの置き方だけで結果が変わった話は『申し込みボタンはしつこいくらい置いた方がいい』に書いています。
どこから直せばいいか分からない場合は、直す場所を絞る手順を先に見てください。
『中小企業のホームページ、最初に直すべき3箇所』で、どこに手をつけるかの決め方を書いています。
【手放すと損をする】3つの仕事

ここが、外注を受けている側としては一番書きにくいところです。
頼まれれば請けられるし、請ければ売上になります。
それでも、出さないほうがいいと思っている仕事が3つあります。
7. 数字を自分の目で見ること
入れるツールは2つで十分です。Google アナリティクス(GA4)と、Google Search Console。どちらも無料です。
GA4では、どれくらいの人が来て、どのページが見られていて、何件申し込みがあったかが分かります。
Search Consoleでは、どんな言葉で検索されて自社サイトが出ているかが分かります。
設定作業そのものは外注して構いません。
むしろ最初の設定は間違えやすいので、分かる人にやってもらったほうが早いです。
何を設定すればいいかは『中小企業がGA4で最初に設定すべき3つのこと』に、毎月どこを見ればいいかは『Search Consoleで毎月チェックすべき3つのこと』に書いています。
手放してほしくないのは、見ること自体です。
数字を外注先のレポートでしか見ていないと、「先月と比べてどうだったか」しか分からなくなります。
そして数字を見ていない状態では、外注先の提案が妥当かどうかを判断できません。
判断ができなければ、結局言われたとおりにするしかなくなります。
最初は意味が分からなくても大丈夫です。
月に一度開いて眺めるだけでも、半年経つと変化に気づけるようになります。
ちなみに「うちのアクセス数は多いのか少ないのか」が分からない場合は、目安を出した記事があります。
『自社ホームページのアクセス数は多い?少ない?』で、中小企業のサイトの目安をまとめています。
8. 社内向けのレポート
月に一度、上司や経営者に向けてサイトの状況をまとめてください。
これは外注できます。
実際、レポート作成を含む契約はよくあります。
それでも自分で書いたほうがいいと思う理由は、社内向けのレポートの目的が、数字の報告ではないからです。
アクセス数と問い合わせ件数を並べただけの資料は、読んだ人に「で、どうするの」しか残しません。
そして、その「で、どうするの」に答えていないと、Web担当者は数字を集めてくる人に見えます。
書くべきことは3つです。
- 今、何が問題か
- なぜそう判断したか(根拠になる数字)
- だから次に何をするか
たとえば、こういう形です。
問題:問い合わせが先月より減った。
根拠:来ている人の数は変わっていないので、減ったのは来た人が問い合わせる割合のほう。特にサービスページから申し込みフォームに進む人が少ない。
次にやること:今月はサービスページの申し込みボタンの位置を直して、来月また同じ数字を見る。
この形にすると、報告ではなく判断になります。
読んだ人に伝わるのは「今月これをやりました」ではなく、この人は数字を見て、次にやることを自分で決めているということです。
Web担当者の仕事が社内で見えにくいのは、作業が見えないからではありません。
判断していることが伝わっていないからです。
そして、ここが外注しにくい理由でもあります。
外注先が作ったきれいな資料は、社内では「業者の資料」として読まれます。
それ以上に問題なのは、次にやることを外注先が書いている状態は、判断そのものが外に出ているということです。
7番で「数字を見ること自体は手放さないでほしい」と書いたのは、このためです。
見ていない人は、次を決められません。
形式は凝らなくていいです。
A4で1枚、上の3つが書いてあれば十分です。
9. 載せる情報と載せない情報を選ぶ
他部署から「このページを追加してほしい」「このバナーを目立つところに置いてほしい」という依頼が来ます。
全部そのまま載せていると、サイトは少しずつ目的からズレていきます。
この判断を外注先に任せると、相手は社内の事情を知らないので、基本的に全部載せる方向に倒れます。
断って揉めるのは自分たちの仕事ではないからです。
断るときは代替案を出してください。
「トップページには置けないが、専用のページを作る」「新着情報として出す」など、行き先を示せば納得してもらいやすくなります。
ブログ記事も同じです。書く本数を増やすことより、目的に関係のある内容かどうかのほうが先に来ます。
社内で記事を書いてもらう場合の進め方は『スタッフにブログを書いてもらうのは難しい』に書いています。
外注を受けている側から見た、費用の実際

「手放せ」と言われても、いくらかかるのか分からないと判断できないと思います。
自分の請求内訳を出します。
筆者が中小企業から保守として月にいただいているのは、8,000円〜10,000円です。含まれているのは次の4つだけです。
- WordPressの更新
- 更新後にエラーが出ていないかの確認
- サーバーの管理
- 軽微な更新(依頼があったときだけ)
新しいページを作る、デザインを変える、記事を書く、広告を運用する。
これらは全部別料金です。
つまり月1万円で全部やってもらえる、ということはありません。
ここまで書いた仕分けに当てはめると、こうなります。
更新して壊れたときに直す部分(5番)は、月額の保守に含まれるので出したほうが安い。
バナーや記事(6番)は、必要になった月だけ都度お願いすればいい。
一方で、レポート(8番)や載せる載せないの判断(9番)は、頼めば請けますがそのぶん請求が増えるうえ、社内では効きが弱くなります。
お金を払って、効果が下がる。
この2つに関してはそういうことが起こり得ます。
自分の売上だけを考えるなら黙っていたほうがいい話ですが、続かない契約になるので書いておきます。
ホームページを守る

9番の判断には、続きがあります。
社内の各部署から来る依頼に対して、「これは目的に合わないので、こちらの形にします」と線を引き続けること。
つまり、9番を一度やって終わりではなく、毎回やり続けるということです。
ここについては、一つ正直に書いておきたいことがあります。
この役割は、社内の人ほどやりにくいという現実があります。
同じ会社の他部署の人から「うちの実績も載せて」と言われて、「目的に合わないので載せません」と突っぱねるのは、立場によってはかなり難しいです。
だからここは、外に出してもいい仕事です。
ただし出す相手を選びます。
言われた作業をこなすだけの相手に出しても意味がありません。
目的に対して責任を持ち、必要なときに「それは載せないほうがいい」と言ってくれる相手でなければ、社内の作業者が一人増えるのと変わらないからです。
この線引きについては『Web担当者は採用と外注どっち?』で詳しく書いています。採用か外注かではなく、置くのが作業者か運用者かで決まる、という話です。
自分でやる場合は、断る根拠を「自分の好み」ではなく1番で決めた目的に置いてください。
「私はそう思わないので」では通りませんが、「問い合わせを増やすのが目的だと決めたので」なら、話が個人の対立になりません。
何から手をつけるか迷ったとき

やることが重なって動けなくなったときは、順番に2つ問いかけてください。
- これは自分にしかできない仕事か
- これはサイトの目的に直接つながるか
1つ目が「いいえ」なら、外に出す候補です。
2つ目が「いいえ」なら、そもそもやらなくていい可能性があります。
他部署からの修正依頼は、急ぐかどうかだけ確認して順番を決めます。
依頼に追われて改善の時間が消えるのが、Web担当者が一番陥りやすい状態です。
打ち合わせで出てくる言葉だけ、対訳を持っておく

外注先や広告の担当者は、こちらが知っている前提で用語を使ってきます。
全部覚える必要はありませんが、話を止めずに聞くために、この5つだけ対訳を持っておくと楽になります。
- CV(コンバージョン)=申し込みや問い合わせが1件入ること
- CVR=来た人のうち、申し込んだ人の割合
- PV(表示回数)=ページが表示された回数
- セッション=1人が1回訪れたことを1と数えたもの
- SEO=検索したときに上のほうに出るようにする取り組み
PVとセッションは別物なので、報告を受けるときはどちらで数えた数字なのかを確認してください。
同じサイトでも数字が変わります。
分からない言葉が出たら、その場で聞いて構いません。
説明を嫌がる相手は、その時点で判断材料になります。
この仕事は、社内で理解されにくい

「パソコン触ってるだけで楽そう」「数字が上がったのは現場が頑張ったから」
Web担当をやっていると、こういう言葉を聞くことがあります。
筆者も言われた経験があります。
Webの仕事は、直しても数字が動くまでに時間がかかります。
しかも動いたときには、何が効いたのか本人にも分からないことが多い。
だから8番のレポートが効いてきます。
「何が問題で、なぜそう判断して、次に何をするか」を毎月1枚残しておくと、数字が動く前の段階から、考えていることが社内に残ります。
結果が出るまで時間がかかる仕事で説明できるのは、結果ではなく判断のほうだからです。
それで必ず評価が変わる、とまでは言えません。
会社によります。
ただ、記録が無い状態では、考えていたことを説明する手段そのものがありません。
1枚残しておくかどうかの差は、思っているより大きいです。
まとめ|9個のうち、自分で持つのは6つでいい
Web担当者の仕事は広いですが、全部を自分で抱える必要はありません。
整理するとこうなります。
- 手放してはいけない……目的を決める/数字にする/権限を自社で持つ
- 手放した方がいい……広告運用/サーバーとセキュリティ/手を動かす作業
- 手放すと損をする……数字を見ること/社内向けレポート/載せる載せないの判断
持つべきは、上の段と下の段。
手を動かす部分は外に出せます。
最後に、今日できることを1つだけ。
今週、自分がホームページのために使った時間を思い出して、それが上の3分類のどれだったかを分けてみてください。
手を動かす作業(真ん中の段)ばかりだったなら、そこが今いちばん詰まっている場所です。
ちなみに、自分がこの仕事に向いているのかが気になる場合は、適性の話も書いています。
『Web担当者に向いている人の特徴6選』では、スキルより先に見るべきものについて書いています。
「9個のうち、どれを外に出すべきか自分では判断がつかない」「今の外注先に何を任せていいのか分からない」という段階で構いません。
SALUTAMでは、今抱えている業務を一緒に仕分けして、どこから手を離すかを整理するところからお手伝いしています。
一人で抱えて手が止まる前に、お問い合わせから気軽にご相談ください。